Powered By Blogger

2011年6月26日日曜日

ITLSインストラクターコース

ITLS(International Trauma Life Support)は病院前外傷初療の標準コースだ

JPTECが基礎コースで、その上級コースという位置付けである

救急隊からドクターカー、ドクターヘリなどのクルーにも打って付けのコースである





ITLSのロゴ
 

そのインストラクターコースが平成23年6月26日新潟大学で開催された


新潟大学救命センター入口

当初3月13日の予定であったが、震災のためここまで延期になっていた



今回受講生として参加してきた


コースのなかでは受傷機転の把握が重要視されている

外傷患者がどんなふうに外力を受けたのか病院で待ち構えているスタッフは知りたいと思っている

そんな時、救急隊がデジカメで現場の写真をみせてくれて

「こんな斜面でここから転落してクルマはこんなふうに大破しています。」

と説明してくれると非常に助かる


百聞は一見にしかずとはよくいったものだ


しかし常にそういう写真が撮れるわけではない 

傷病者にレンズを向けるのは罪悪感を感じたりもする

写真を撮る時間すらない切迫したことも多い


受傷機転を考えながら活動するということはとても大切である

いずれ受傷機転の把握が困難であった症例を紹介しようと思う

尚、当院ERで意識障害の患者が搬送されてきた際、簡易血糖測定をすぐするのはITLSから取り入れたものである


  



  

2011年6月19日日曜日

東北DMAT技能維持研修

平成23年6月18日~19日、仙台で東北DMAT技能維持研修が開催された

研修に先立ち、東日本大震災の犠牲者に1分間の黙祷が捧げられた

講習では講義とシミュレーション、机上トリアージ訓練などがおこなわれた


仙台急患センター


そして2日目、今回の目玉である討論「東日本大震災」

DMAT活動の内容と反省がそれぞれのキーパーソンから発表された

発表者により内容に差があったように思う

今回の震災は非常に広域で、活動した場所、時期により大きく状況が異なっていたためだろう


以下のようなことがとりあげられていた

初めて自衛隊機(C1輸送機)を使用した広域医療搬送がおこなわれた

病院支援のありかたも検討すべき

通信手段がなく非常に混乱した



福島県立医大の長谷川有史先生の原発事故に対する発表もあった

「私は新潟県人ですが、この福島が大好きです!」

悲しいまでにひたむきな姿勢に胸をうたれた




最後に福島県立医大田勢長一郎先生が、

「もしDMATがいなければ、こんなにスムーズにはいかなかった DMATの訓練が活かされたと思う」

とまとめられた

この言葉で自分の中にあったモヤモヤも少し減った気がした


研修終了後、仙台市宮城野区蒲生までいってきた

津波の傷跡はまだ痛々しい



更地になった土地と大きく破損したアパート


道路脇に流されたクルマが溜まっている



瓦礫こそずいぶん片付けられたとはいうが・・

土台だけになってしまった住宅地

道路の脇にはつぶれたクルマがゴロゴロ

うず高く積み上げれた瓦礫の山




まだまだ震災は終わっていない



   

2011年6月11日土曜日

つつがなしや

5月の連休があけるとこの地域ではそろそろこの季節がやってくる

ツツガムシ病の季節だ


年に10件ほどだが診断が難しいこともある

主訴は発熱で、肺炎や尿路感染などはない

皮膚に発赤が見られることも多い 赤ら顔のように見えることが多い


以前こんなことがあった

発熱の原因はよくわからいが、とりあえず入院

抗生剤治療をする(セフェム系やペニシリン系がほとんど)がよくならない

どんどん悪化してくる

・・・・

こんな時に救世主があらわれた

「先生、刺し口みたいのがありましたよ」

看護師がツツガムシ病に特徴的な刺し口を見つけてくれたのだ


ツツガムシ病の刺し口 


これでもう診断がついたも同然

普段使わないテトラサイクリン系の抗生剤を使えばすぐに良くなってくる

ちなみにニューキノロン系は全く効かない



刺し口は直径が数mm~1cmでカサブタのようになっている

からだのどこかに1ケ所あるのだが、尻の割れ目の中にあったこともある

刺し口は痛くも痒くもない 

自分で気付くひとは少ない



過去には信濃川河川敷に注意と言われたが、

今では危険エリアは非常に拡大している

リッケチアがツツガムシというダニによって媒介され感染が成立する


ツツガムシ


有毒ツツガムシの比率は0.1~3%とされている

ツツガムシはとても小さく肉眼でみるのは困難である

リッケチアはさらに小さくミクロンの単位だ



病気を診断するのはもはや医師だけではない

これからの医療はチーム医療であると強く感じた



   

2011年6月2日木曜日

メディカルコントロール

メディカルコントロール(MC)・・・・知らないひとは多い

分かりやすく言えば
MC担当医師は救命士にオンライン指示、教育、事後検証などを行っているが
こうした救命士の活動をバックアップしている体制をMCという


以前の当院での事後検証を紹介する

実際の現場はわたしたちが頭で想像している以上に複雑で、数奇である


日没も迫った夕方、高齢の男性が水田の中で倒れているのが発見された

呼吸はあるが意識はないらしい

通報を受けて救急隊出発!


救急隊が到着時には既にまっ暗闇

救急車から降りて数百メートルのところに要救助者がいた

農道はあぜ道になり、更にぬかるんだ細いあぜになった



翌日の現場



探しに来ていた家族が男性を抱えていたが、皆どろまみれ

そして男性は既に心肺停止



救急隊も泥だらけになりながら、とりあえずあぜ道に男性を横たえた

しかし胸骨圧迫できる固い地面などなく

AEDのパッドを貼ろうにもすべてが泥だらけ

処置は全くできず、救急車をめざして急いで担架で搬送した


この間約7分


ようやく男性を車内収容し、乾いた布で前胸部を拭き、パッドを貼った

心電図波形は何と心室細動

ショック!

心肺蘇生は延々と続けられたが心拍は再開しなかった



さてあなたが救命士ならどうしたであろうか

泥のなか無理にでもパッドを現場で貼ったのであろうか


恐らく良い答えなどないであろう

こうした現場での活動は困難を極めるということを忘れてはならない