Powered By Blogger

2011年7月3日日曜日

受傷機転

ITLSでは受傷機転の把握を重要視している

推理小説のような実際の事故の症例を提示する


高齢女性が家の中で倒れているのを帰宅した家族が発見

救急搬送された


ちょうど同時に重症者(トリアージでは赤)が搬送されてきていた

このためトリアージでは黄色のこの症例は後回しにされた

この判断はとてもよい

救急隊は消化管出血の疑いと判断していた

来院時の写真


私も消化管出血かもしれないと第一印象では感じた

便失禁があり生臭い臭いがして下血もありそうだ

鼻と口の周りには血液が付着していた


この女性はJCS1ケタで会話が可能であった

どうしたのか?とたずねると自分でもよく覚えていないとの返事

全身観察で後頭部と右鎖骨付近(緑矢印)に大きな血腫を認めた

外傷だ!

右鎖骨の腫脹部位には心電図モニターの電極が貼ってあった

少なくともその時はここまでは腫れていなかったであろう

鼻と口からの出血は打撲による出血だ

よく見るとシーツに嘔吐のあとがあり(赤矢印)、血性ではない

家人に、階段など落ちるようなところがあるか聞いてみた

高いところの棚を利用する際、不安定な台を使っていたとのこと

その台は近くに置いてあった

謎が解けていった

もう一つの謎は鎖骨側と後頭部を同時に打撲することはない

近くにテーブルなどはないか聞くと、四角いテーブルがあるとのことであった


推測図


テーブルと床の両方に強くぶつかったことが推測された

一見 内因性疾患を疑う外傷の症例であった