推理小説のような実際の事故の症例を提示する
高齢女性が家の中で倒れているのを帰宅した家族が発見
救急搬送された
ちょうど同時に重症者(トリアージでは赤)が搬送されてきていた
このためトリアージでは黄色のこの症例は後回しにされた
この判断はとてもよい
救急隊は消化管出血の疑いと判断していた
来院時の写真 |
私も消化管出血かもしれないと第一印象では感じた
便失禁があり生臭い臭いがして下血もありそうだ
鼻と口の周りには血液が付着していた
この女性はJCS1ケタで会話が可能であった
どうしたのか?とたずねると自分でもよく覚えていないとの返事
全身観察で後頭部と右鎖骨付近(緑矢印)に大きな血腫を認めた
外傷だ!
右鎖骨の腫脹部位には心電図モニターの電極が貼ってあった
少なくともその時はここまでは腫れていなかったであろう
鼻と口からの出血は打撲による出血だ
よく見るとシーツに嘔吐のあとがあり(赤矢印)、血性ではない
家人に、階段など落ちるようなところがあるか聞いてみた
高いところの棚を利用する際、不安定な台を使っていたとのこと
その台は近くに置いてあった
謎が解けていった
もう一つの謎は鎖骨側と後頭部を同時に打撲することはない
近くにテーブルなどはないか聞くと、四角いテーブルがあるとのことであった
推測図 |
テーブルと床の両方に強くぶつかったことが推測された
一見 内因性疾患を疑う外傷の症例であった