Powered By Blogger

2011年7月31日日曜日

新潟・福島集中豪雨

平成23年7月28日早朝から一帯は猛烈な雨が降り出した

一時落ち着いたが7月29日午後7時30分頃から鍋をひっくり返したような雨になった

午後8時過ぎから雷鳴が轟き、市の中心部が数回停電になった

当院は自家発電に切り替わったが、火災報知器が誤作動し、電話が不通になってしまった

外では緊急自動車のサイレンが雨音のむこうに響いている

小川や流雪溝から水があふれ出している

病院の駐車場もひどくはないが冠水した


まもなく鉄砲水に流された重傷者1名、川に流された2名、自動車の誘導中にはねられた1名

がほぼ同時にきてERは大混乱に陥った

病院の電話が不通で、救急車も突然やってくるしかない

全身泥だらけの負傷者が水の勢いを伝えてくれる


鉄砲水は自宅裏山の小さな沢で突如起きた 

全く予想できない 自然の脅威だ


目の前で肉親を流された悲しみと恐怖は想像もつかない


十日町でこれほどの水害が起こることは全く予想していなかった


道路も冠水していて輸血用の血液が無事に届くか心配であったが間に合った

夜が明け濁流の川に転落した方の遺体が見つかった

薬がなくなった、取りに行けないという方が数名来院した

7月30日夕方に市に避難所に救護班を出した方がよいかと問うと今のところはよいとのことであった


水の引いた駐車場7月30日夕方




孤立した集落もあり、簡単には行けないとのことであった

少し小降りになってきたがまだまだ油断できない

   

2011年7月26日火曜日

シマヘビとマムシ

当院ではヘビ咬傷のほとんどはマムシによるものである

マムシに咬まれたと自らヘビの種類をいってくるひとが多い

来院時既にかなり腫れている

ところが平成23年度はそのマムシ咬傷がめずらしく来ない

いつもなら田んぼの仕事が始まるとマムシの季節がやってくるのに・・・


その代わりにおそらく別のヘビ咬傷と思われる症例が多い

ヘビの牙痕はあるが腫れが全くない

ある時そのヘビを生け捕りにしてきたひとがいた

シマヘビだ

透明のプラスチックのいれものの中で、私たちにとびついてくる

かなり凶暴だ

牙はするどく、咬まれるとかなり痛い

ただ毒はないので心配ない

抗生剤と破傷風トキソイドの注射をして帰宅


上がシマヘビ、下がマムシ


7月下旬になりようやくマムシ第一号来院

既に腫れている


矢印が牙痕


こちらは入院して治療が必要だ

マムシ抗毒素血清が効いて翌日の腫れはひどくならなかった


    

2011年7月22日金曜日

おいしい石鹸?

認知症の高齢男性が自宅の固形石鹸を食べたとのことで救急外来へやってきた

心配した家族が連れてきたのだ

本人は全く症状がなかった


左が未使用、右が老人が食べた石鹸

その石鹸はブルーベリーのようなさわやかな匂いがして、確かにおいしそうであった

老人の気持ちも分からなくはない

家族は未使用のものと食べ終わった石鹸の両方を持参してくれた

どれだけ食べたか良くわかった

本来なら入院が望ましいのだが、認知症がひどいため無理だった

牛乳を飲ませ、しばらく外来で様子観察のあと帰宅してもらった



日本石鹸洗剤工業会のHPでは口やのどの痛み、下痢、腹痛、嘔吐などが見られるとある

幸いにもそのような症状は出なかったようだ

それにしてもおいしそうだなと家族が残していった石鹸をみて思った


   

2011年7月12日火曜日

一般市民による除細動

先日、十日町市内で一般市民によるAEDを使用した心肺蘇生(CPR)がおこなわれた
その結果、この方は無事社会復帰できた


十日町市内では一般市民によるAEDの使用がこれを含めて2件ある

1件はショックをしたが救命にいたらなかった

今回が初のショック成功、しかも社会復帰であるのですばらしい


ある日の午後、十日町自動車学校内で講習を受けている方が突然倒れた 

教官がすぐさま、質の高いCPR+AEDをおこなった




Torsade de Pointesに対してショック



救急隊が接触時には既に自己心拍再開していた

受講生に心肺蘇生を教えることも多いのだろうが普段の訓練が活かされたとおもう


前回は救命にいたらなかったため、蘇生処置をおこなった市民が精神的ダメージを受けてしまった

それでも地域メディカルコントロールはこの救助者を表彰し、いくらかでも精神的負担を減らそうとした

”AEDは魔法の箱ではないので、それはあなたのせいではない”


新潟日報より



今回、地域メディカルコントロールは十日町自動車学校を表彰し、その様子は新潟日報にも出ていた


   

2011年7月3日日曜日

受傷機転

ITLSでは受傷機転の把握を重要視している

推理小説のような実際の事故の症例を提示する


高齢女性が家の中で倒れているのを帰宅した家族が発見

救急搬送された


ちょうど同時に重症者(トリアージでは赤)が搬送されてきていた

このためトリアージでは黄色のこの症例は後回しにされた

この判断はとてもよい

救急隊は消化管出血の疑いと判断していた

来院時の写真


私も消化管出血かもしれないと第一印象では感じた

便失禁があり生臭い臭いがして下血もありそうだ

鼻と口の周りには血液が付着していた


この女性はJCS1ケタで会話が可能であった

どうしたのか?とたずねると自分でもよく覚えていないとの返事

全身観察で後頭部と右鎖骨付近(緑矢印)に大きな血腫を認めた

外傷だ!

右鎖骨の腫脹部位には心電図モニターの電極が貼ってあった

少なくともその時はここまでは腫れていなかったであろう

鼻と口からの出血は打撲による出血だ

よく見るとシーツに嘔吐のあとがあり(赤矢印)、血性ではない

家人に、階段など落ちるようなところがあるか聞いてみた

高いところの棚を利用する際、不安定な台を使っていたとのこと

その台は近くに置いてあった

謎が解けていった

もう一つの謎は鎖骨側と後頭部を同時に打撲することはない

近くにテーブルなどはないか聞くと、四角いテーブルがあるとのことであった


推測図


テーブルと床の両方に強くぶつかったことが推測された

一見 内因性疾患を疑う外傷の症例であった