平成22年夏、猛暑の中、消防本部からのホットラインが鳴った。
「秋山郷で40歳代男性が重傷、救急隊が現場に向かっている。信州ドクターヘリを要請しているが、ヘリが飛ばない場合にはドクターカーを要請をするので待機をお願いしたい。」
「了解」
当院から現場へは緊急走行でも1時間はかかる。そこから緊急処置をしながら病院へ戻ると2時間以上。しかも当院は3次救急病院ではない。陸路では絶望的な距離と時間だ。
「救急隊、ただいま現場到着、傷病者はショック状態。ドクターヘリは出動するとのこと。ドクターカーは不要。」
おお、ついに飛んだかと感激。秋山郷でのドクターヘリは、今まで全て断られていたのだ。
30分後、ドクターヘリの基地病院から電話がはいった。
「救命センターのSと申します。40歳代の重傷外傷ですが、収容可能でしょうか?」
「残念ですが当院では対応できないかもしれません。」
「わかりました。長野県内の病院をあたってみます。」
当地域消防本部がドクターヘリの要請シミュレーション訓練をしたのが2年前だ。
スムーズなヘリ要請ができたのは訓練の賜だ。
ドクターヘリの時代が遂にやってきたのだ。